Sting2k3
カーテルが忍者を殴る蹴る

いったいどうした???
スティング2k3レポート
by minako ikesiro

「カーテルがニンジャを殴った!」この事ばかりクローズアップされているスティング2003。
確かに殴りかかったし、ボトルの嵐が降っておしまい、と言った<おっかない>場面も多々あり、ジャマイカの新聞も数日間はその話題を引っ張っていましたが、もとい、スティングはジャマイカの「紅白」。手強い観客を相手に、アーティスト達が必死にパフォームするのが醍醐味の大型コンサートで、見応えはたっぷりありました。スピーカーの真ん前に陣取って、観戦(?)した模様をお伝えします、ハイ。
12月26日(ちなみにこの日は当HP の主催者、じゅんちゃんのバースデー。さすが、ミス・スティング!?)、夜中の12時40分(もう27日ですね)に会場入りして、写真を撮りやすく、脇に逃げやすい場所を確保。この日の出演予定アーティストの総数は約70組。私が実際に観たのは20組強とギャップがあるのですが、頭から観に行く体力はないのでまぁまぁの数だったと思います。
到着した時、ステージに居たのがキャプテン・バーキーとウィッカーマン。ヴェテランらしい「話芸」を披露してました。ピンチャーズやアドミラル・ベイリーといった辺りもすでに出てしまっていたのが残念。
次がDaVille(ダヴィレ)。Trifectaリディムの“Bring It On”がヒット中の美声シンガーで、背が高くてなかなかカッコいいので、人気が出そうです。
次がGabriel(ゲイブリエル)。エミネム“Loose Yourself”のトラックでスタート、これがウケてジャマイカのアメリカナイズ化が進んでいるのを目の当たりにした気が。シメも50セントのトラックだったし。
クィーン・ポーラ。地元代表+ほかのフィーメール・DJをやっつけるケンカ腰リリックで、人気を博していました。対抗馬としてマッカ・ダイアモンドが出てきたのですが、ポーラ、観客共からケチョンケチョンにされ、立つ瀬なし。女性同士のクラッシュで盛り上がったのが面白かったです。
おっと。このペースで行くと終わらないので飛ばします。スカイジュースが客席を煽った後、5thエレメント・クルーのアンソニー・クルーズ、リッチー・スパイスと続いて、チャック・フェンダー。この人もかなりの人気。時計の針は2時半を指し、シンガーが続いたのでお客さんがジリジリし始めている感じです。
4人組のダンサーの後、我らがジュンコ嬢の登場。MCの仕切りが悪く、出だしでモタついたのを何とか跳ね返し、腰フリダンスでグアッと決めました。周りのカメラマンがすごい勢いでステージ中央に突進してシャッターを切っていましたね。この後、どんどんお客さんの態度が悪化していったので、ここで出ておいたのは本当に良かった。3万人のキビシイ観客の前でパフォームできたら、あとは怖いモノなしでしょう。

次が、ヴィザの関係でなーんと7年振りのジャマイカ帰還だというサンチェス。NY では1年に1,2回のペースで観ていたので気がつかなかったのですが、ずっとマイアミに住んでいたそうで。“Missing You”や“Loneliness”といったクラシックを歌いつなぎ、客性はうっとり、ため息モード。でも、ちょっと長かった。25分を過ぎたあたりから客が冷めていき、B・マクナイトやジャヒーム、R・ケリーのカヴァーを歌ったあたりで、客席が固まってしまったのです。いやぁ、キビシイ。「もういい!」というサインで交互に腕を振ったり、「おしまいにして!」という意味の拍手も出始めたりし、とうとうボトルが飛んで来ました。“Never Dis A Man”と“Frenzy”で持ち直し、力技の“Amazing Grase”で黙らせていましたが、スティングで45分は長すぎだったようで。

そのとばっちりをモロに喰らったのがフランキー・ポール。ステージの中央に出てきた瞬間にブーイングとボトルが飛んできて。ステージを背に客席を眺めたら、水の入ったプラスティック・ボトルが空を舞い、みんな「ノー!」のサインを両手で示している、哀しい光景が目に入ってきました。じゅんちゃんが言うように、ゲイの噂があることも関係あるとは思いますが、イケイケのダンスホールを欲しているタイミングに出てきたのも良くなかったように思います。ワン・ヴァースも歌えなかった彼は、しばらくジャマイカに戻って来ないのではないでしょうか。
ほかのヴェテランも引いてしまったようで、この後一人も出てきませんでした。 MCが怒りモードの観客をなだめた後、プレデターが登場。待ちに待ったDJなので、実力以上の(?)歓声を受けていました。
王子系のキップリッチやウェイン・マーシャルも03年に放った曲をサクッと3曲ずつくらい披露、それなりに沸かします。しかし、スティングはステージに立つ方も命がけですね。ボトルだけでなく、打ち上げた角度が甘いロケット花火が頭上を飛ぶのです。10メートルくらい離れたところで観ていたのですが、ヘタをすると火傷をしそう。

後日、シズラのエンジニアを務めているガーフィールドと話した時、「いくら金を積まれてもスティングの仕事は絶対引き受けない」と言っていたくらいです。次がブリング・ドゥグ。及第点。ワード・21はアウトキャストのドレー3000“Hey Ya”のヴィデオからアイディアをもらったお揃いのピンクのスーツで登場。髪もストレートにして芸人魂を見せてくれたのですが、全身ピンクってジャマイカ的にOKなんでしょうかね。衣装に気を取られてパフォーマンスの良し悪しはちょっと分からなかったです。
次がアンソニー・B。取り巻きラスタとお揃いのダンスを披露したりで面白かったのですが、コミカル路線にシフトしているのは気になるところ。一度、そっちに行ってしまうと「正統派」に戻って来られませんから…。
後半は“Mr Heartless”と新曲“Someone Loves You”でビシッとキメました。
ダブ・ポエットのD.Y.C.R もタイミングが悪かった。出だしこそ悪くなかったものの、アッと言う間にボトルの餌食になりました。この人が妙に根性のある人で、それでも袖に引っ込もうとせずに事態が悪化したので、周りが慌てて引っ張っていきました。この辺りから、私自身が危険を感じ始めて取りあえずメモを取るのを止めて、身軽な体勢に。
注目のアサシンは“Gilrs Alone”ほか3曲をタイトに。21才と若いわりに堂に入ったステージングに感心しました。フリスコ・キッドは中堅らしく会場全体の雰囲気を整えて退場、
その次がなーんとエレファント・マン、現地風に言うとエリーです。びっくりしました。だって、ヴァイブス・カーテルの前なんですから!この日のカーテル人気は凄まじく、MCが「誰が観たいんだー、ビーニかぁ?」と呼びかけると「ノー!!」というレス。エレ、サンチェスでも「ノー!」でバウンティーでやっと「イエス!」が混ざった返事になってましたが、「カーテルかぁ?」との問いで満場一致の「イエース!!」。じゅんちゃんの解説によると、会場となった地域の出身というのも大いに関係あるらしいのですが、それにしても、スゴイ。で、エレ君に話しを戻すと、サンタの衣装で登場、それなりにウケてましたが、7月のカリフェス、9月のハマースティン・ボウルルームでのショウ(ともにNY)での圧倒的なステージングを観た私としては、イマイチの冴えでした。

アルバム・リリース直後のインタヴューで「12月にジャマイカのステージで爆発するから観に来い!」と啖呵を切っていたわりには…という感じ。声の入ったオケを使うんですよ。つまり、半分口パク。NYのリリース・パーティーでもやっていて、その時はクラブだったものだから、会場の音響の問題もあったのかな、と大目に見ることにした(=記事にしなかった)のですが、スティングでやるのはカッコ悪い。ダンスが肝なのは分かるけれど、「キミはビヨンセか」って思っちゃいました。“Pon De River”も“Signal De Plane”も一年以上前から引っ張っているネタだし(盛り上がってはいましたが)、新曲をやればいいのに、と思ったところで出ました、“Chiney Ting”。このHPをチェックしているレゲエ通の皆様には説明不要だと思いますが、これは本当に「何を今さら!」です。キングストンに滞在中の日本人女子約一名をステージに上げて絡んだものですから、ジャマイカ人の観客は大歓び。固まってしまいましたよ、私は。呆然、憮然。私事ながら、03年はエレ君のメジャー・デビューに向けて頼まれた分、頼まれてもいない分を含めて原稿を書きまくったのです。ヒップホップ方面の同業者・関係者の「ダンスホール人気もどうせショーン・ポールどまりでしょ」というクールな反応を見返したい、という気持ちも多分にあったのですが、『Good 2 Go』の出来も良かったのも大きかった。だから、このアジア人バッシング曲で沸かせようとするエレ君の姿は心底情けなかったです。ボトル、投げてやろーか、と思ったくらい。至近距離に居て、かなりの確率で命中しそうなので止めたのですが。ご丁寧にも、エレ君は「チャイニーズの!」という解説を入れてました。これ、また日本人を怒らせてダブの仕事が減るのがイヤだったんだと思います、深読みではなく。客席は心得たもので「中国人じゃなくて、日本人だろ!」って茶々が入ってましたね。ジャマイカにしょっちょう来ているジュンコ嬢なんかは「もう慣れた」と冷静なコメントをしていましたが、私はまだダメです。街中でセクハラまがいの声をかけられることも実際にあって、全くもって迷惑な現象です。

さてさて。そろそろ佳境に入ってきました。いよいよ!のカーテル君です。この間までキャップにジャージーという小僧系のファッションだったのですが、最近は大物感の醸し出すファッションで、この日も長めのブレイズに派手な刺繍のコートを来ての登場。やっぱり一番人気。
ちなみに03年末もっともホットな曲も彼の“Tek Body Gal”。何をやっても、言ってもウケる状態だったのに、一人でケンカ腰になってヒット曲の合間のMCでニンジャをディスし始めました。カーテルの言葉を一言一句聞き取れるほどの「パトワ力」は私にはありませんが、ニンジャが家族に手を上げた事件について言ったり、バティマン呼ばわりをしているのは分かり、「きつーい」と思ったところで、慌てたプロモーターがステージに出て来てカーテルをなだめようとします。段取りと違ったんでしょうね。それでもカーテルの挑発は続き、とうとうニンジャをステージに呼び出しました。学者スタイルのニンジャは衣装のインパクトで観衆を3秒くらい黙らせ(感心させ)ましたが、その後はブーイングとボトルの嵐。
私はずっと水の入ったプラスティックのボトルが飛んでいると理解していたのですが、ここで30センチくらいの距離で「ガシャーン」と割れたのがガラスのボトル。ゲッ、となったところで、ステージ上でカーテルとニンジャが頭をつき合わせたと思ったら、カーテルの体がニンジャに躍りかかり、袖から出てきた数名とニンジャを押し倒してしまったのです!一瞬何が起こったのか分からなかったのですが、「ケンカだ!」と頭の中で合点が行ったのと同時に、ボトルやら何やらが後方から飛んできて、コンクリートの上に居た人達と慌てて下に降りて、隠れました。怖い、という感情はあったのですが、どこか現実感がなくて普通に行動している自分が不思議でした。VIPエリアの脇にいったん逃げて、一緒に行った人の無事を確認したところで、出てきたのがビーニ・マン。
その場を収めるべく、ヒット・チューンを連発し始めました。あの混乱の中で出てきたのは相当勇気があったと思います。「クラッシュは口でやるもので、体でやるもんじゃない!」ともっともなコメントをし、コンサートらしい雰囲気に戻しました。エライ、とは思ったものの、すでに帰りたくなっていたのが本音。じゅんちゃんが楽屋にトリを務めるはずのバウンティーの姿がない、との情報をゲット、「また荒れるよ!」との声を合図にステージの裏に回ったあたりで、バカ正直なMCがバウンティーが出ない事をアナウンス、ボトルだけでなくガン・ショットも飛び交う騒ぎになったようで、人波がダーッと走って来ました。その光景だけで、2度目のドッキリです。 ステージ脇と楽屋側にいたジュンコちゃんによると、ステージまで届くのは重量のあるガラスのボトルばかりだったとか。ブルックリンのコンサートでもガラス・ボトルは御法度で必ず紙コップに移し替えて売っているのに、<元祖ボトル投げコンサート>のスティングでまだ出回っているのには呆れました。楽屋でもガン・ショットがあり(何でもセキュリティーが子供を撃ったそうで…)、ジュンコ嬢も飛んできた薬莢が脇腹にあたり、一瞬「う、撃たれた?」と思ったとか(ダンスが激しいわりに、素顔はポワッとしているのが彼女の素敵なところですね)。爪でえぐられたような痕になっていて、痛そうでした。 負傷者も相当数出たので、年末の新聞はこの話題で持ちきりでした。カーテルとニンジャは逮捕され、一応仲直りし、「反省している」と謝罪していました。新聞沙汰になったことで、カーテルの本名がAdidja Palmer?(アディジャ、と読むのでしょうか)だと分かったのがちょっと面白かった。プロモーターのシュープリーム・プロモーションはこれを最後にすることも検討していると発表しています。30日にサンチェスのプレス・カンファレンスがあり、その際に話す機会があったのですが、知り合いのじゅんちゃんには「止めるわけないじゃん」とこそっと返答し、プレスと紹介された私には「非常に深刻に受け止めている。今後はマイアミとニューヨークだけでやるかも」と返事をしていました。ニューヨークは8月15日くらい、とかなり具体的な日程を口にしてましたよ。 最後に。このレポートは決して「危ない体験自慢」のために書いたのではありません。リリックでの<殺し合い>が観たかったわけで、殴り合いなんてお金を払ってまで観たいものじゃないですし。コンサートとしては、翌日のモーガン・ヘリテッジ主催の<East Fest>や、大晦日のココ・ティー主催の方がずっとずっと素晴らしかったです。ただ、スティングでの出来事もレゲエ・カルチャーの一部、じゅんちゃんが頑張ってプレス・パスを取ってくれたことだし、何らかの形で伝えるようと思いまして。この手のコンサートを観に行く際は、スニーカーを履いて、言葉と現地の事情が分かる人と一緒に行くのが望ましいですね。 それから。「大先輩にタテ突くなんてトンデモナイ!」と業界内から怒られているアディジャ君ことヴァイブス・カーテルですが、この一件をバネにますますビッグになるのではないでしょうか。04年は彼の年になるような予感がしています。
Peace out
このレポートを書いてくれたのは今回NYより仕事プラスバケーションでジャマイカに来ていたNY在住の音楽ライターいけしろみなこさんです
みなこさんはHipHop・R&Bもちろんレゲエ関係の記事をNYで書いている売れっ子ライターです